日本超音波医学会第99回学術集会と同時に開催された、第18回日本ポイントオブケア超音波学会学術集会。本学会において「第4回 Student POCUS League」、通称SPLが開催されました。

SPLは、全国の医学生が超音波検査、特にPOCUS(ポイント・オブ・ケア超音波検査)に関する知識や技術を競う大会です。今年度で4回目を迎えた本大会の全体の様子を振り返ります。

会場の様子会場セットアップ
会場の様子

全国から集う医学生たち

2026年5月30日 土曜日、晴れ。

この日、会場となった東京国際フォーラムに100名を数える医学生が集まりました。第4回 Student POCUS League。昨年度は13大学だった参加チームが、今年度は23大学と大幅に増加。全国82の医学部のうち4分の1以上が参加する大規模な大会となりました。

各大学からは、それぞれ3~5名で構成される1団体のみが参加可能となっており、エコーサークルや救急サークル、その他の医療系サークル、あるいは本大会のために結成された有志のチームなどが顔を揃えました。

大会開始時に全出場者が一部屋に集められると、その人数の多さに圧倒されるほどで、学生間で年々高まりを見せるPOCUSへの熱意が存分に感じられる空間でした。対面での大会開催は、他大学の学生と顔見知りになる良い機会ともなり、大会後にはファイヤーサイドトーク(振り返り・懇親会)を通じて大学間で交流する姿も見られました。

参加者と運営メンバー
参加者と運営メンバー

不安と緊張の入り混じる会場

会場には複数のブースが用意され、大会は競技ごとに参加チームが移動する形式で行われました。

出場者以外の学会参加者は各ブースに自由に出入りすることができ、選手らが競う様子を間近で見学できる環境となっていました。エコー試技中・問題解答中の出場者の後ろでは、例年よりさらに多くの見学者が周囲を取り囲み、会場にはいつも以上の不安と緊張が漂っていました。

一方で張り詰めた空気の中にも、楽しみながら大会に参加する出場者の姿もあり、チーム戦ならではの協力し合う様子が随所に見られました。参加チームの視点に立てば、他大学の様子を見る機会は限られていましたが、その分自分たちの目の前の課題に落ち着いて取り組むことができた面もあったと思います。

大会は予選、準決勝、決勝と段階的に進みましたが、どの結果発表においても会場全体には緊張の走る瞬間がありました。これまでの努力を1回切りの本番にぶつける、出場者の覚悟が垣間見えました。

開会式にて
開会式にて

最初の関門、予選

朝8時。大会の競技はここから始まりました。最初の関門である予選は、出場全23大学中わずかに4大学しか通過できない、チームが最も絞られるフェーズです。数チームごとに各ブースを移動し、4つのテーマに挑戦しました。

絵合わせ:スクリーンに映し出されたエコー画像と同じ像を、複数のメンバーで実際に描出するタイムアタック。
心得:心臓の基本3断面(長軸像、短軸像、心尖部四腔像)を、メンバー2人で順に描出するタイムアタック。
知識①・②:POCUSの基礎的な知識や技能について問う4択問題(各10問)。

23チームは3つのブロックに分けられ、各ブロックの上位1チーム、及び全体で知識問題の合計得点が高い1チームの計4チームが準決勝に進出するという形式です。

今大会からの新しい競技内容や、当日のルール変更、慣れない環境...。様々な制約がある中で、各チームは精一杯取り組みました。

エコー試技・知識問題の様子
エコー試技・知識問題の様子

準決勝、POCUSを臨床へ

予選を通過したのは、和歌山県立医科大学、浜松医科大学、日本大学、横浜市立大学の4チームでした。結果が出る頃にはお昼を回っていました。競技はまだまだ続きます。

準決勝では臨床現場に即した4つのシナリオが用意され、4チームがそれぞれのブースを回りながら模擬診察を行うメディカルラリー形式の競技となりました。エコーの描出技術だけでなく、実臨床を想定した対応力と臨床推論が求められました。それぞれのシナリオは以下の通りです。

病院前救護:交通事故による重軽傷2名に対する初期対応(緊張性気胸など)。
在宅:主訴がはっきりしない患者の診察(急性胆嚢炎)。
病棟:複数の病態が併存する患者の診察(深部静脈血栓症による肺血栓塞栓症、及び腎盂腎炎)。
ER:応答があいまいな患者の初期対応と、患者家族への情報聴取(皮下膿瘍による敗血症性ショック)。

これらのシナリオでPOCUSを駆使し、各10分という制限時間の中で診断や治療、報告、搬送などを行いました。

結果は非常に僅差となりました。準決勝4シナリオにおける合計得点が並ぶ大学もあったため、規定に基づき予選での知識問題(こちらも同点となる大接戦!)や絵合わせの得点も参照され、最終的に2チームが決勝の舞台へと駒を進めました。

診察・膝窩静脈描出の様子
診察・膝窩静脈描出の様子

限界に挑戦する白熱の決勝戦

準決勝を勝ち残ったのは、和歌山県立医科大学「K-PICS」と、浜松医科大学「HERUS」。

決勝は全体の前でエコー試技と臨床推論を行う、公開形式で実施されました。

肺・心臓・腹部のPOCUSを実施し、一連の描出が早かったチームが先に解答権を得て、提示された症例に対して臨床推論を行うという競技です。先攻チームが任意の臓器を指定することで、そのエコー画像が両チームに共有されます。そしてWorking Diagnosis、すなわちPOCUSの所見から病態を最もよく説明するであろう診断の解答を試みます。完答に至らない場合は後攻チームが次のエコー画像を指定して解答していき、これを完答が出るまで交互に繰り返して行きます。

症例は3題。2点先取で優勝となります。それぞれの症例は次の通りでした。

第1問:気胸による閉塞性ショック。提示された様々な情報からは複数の鑑別が挙がる症例でしたが、先攻 HERUS チームが一発診断を下しました。
第2問:甲状腺中毒症。精神症状をきたした一例で、こちらも先攻 K-PICS チームが一発で完答となりました。

会場の様子、症例提示
会場の様子、症例提示

ここまでの2問で、両チームがそれぞれ1問ずつ得点。

過去のSPLで3大会とも優勝を果たしている強豪、HERUSか。
今大会の予選・準決勝でトップの成績を叩き出した新進気鋭、K-PICSか。
勝負の行方は、最終第3問の診断に託されました。

第3問:SLEによる胸膜炎。未診断の背景疾患が存在し、かつPOCUS所見が非特異的であったため、その関連づけに両チームとも苦戦することとなりました。先攻・後攻が交互に解答を重ね、3周しても完答には至らず、運営からのヒント提示を経て下された両チームの最終診断も、とうとう完答には届きませんでした。

優勝の判定は出題された先生方に委ねられ、大会後のファイヤーサイドトークにて全体発表されることになりました。

エコー試技の様子
エコー試技の様子

夜20時を回る頃、ついに結果発表となりました。

第4回 Student POCUS Leagueを制したのは、決勝 第3問でより診断に迫る推論を行った浜松医科大学「HERUS」。今大会で4連覇となりました。

準優勝は和歌山県立医科大学「K-PICS」。

23大学のチームが繰り広げた一日がかりの大熱戦は、こうして幕を閉じました。

優勝 浜松医科大学 HERUS
優勝 浜松医科大学 HERUS
準優勝 和歌山県立医科大学 K-PICS
準優勝 和歌山県立医科大学 K-PICS

SPLを終えて

あの日、あの場所に集まった医学生は誰もが輝いていて、エコーの未来をつなぐ道筋が確かに見えました。

圧倒的な実力を目の当たりにすることもあれば、わずかな差で勝敗が決まる接戦の瞬間もありました。その背景には、どれだけの努力が隠されていたことでしょう。届かなかったことも、出し切れなかった力もきっとあった。でもみんなが頑張っていて、出場者でなくとも手に汗握るような張り詰めた空気があって、本当に印象的な大会でした。

ここで得た経験は、自分たちの成長の糧になります。それは出場した人にしか得られない特権です。

全競技終了後、決勝会場にて
全競技終了後、決勝会場にて

最後に、大会を運営してくださった皆さま、出場者の皆さまと、関わってくださったすべての方に心より御礼を申し上げます。今後とも医学の研鑽に精進してまいります。ありがとうございました。

全体集合写真

浜松医科大学4年 河内真央